「……あの女は知り合いか?」
低く、探るような声だった。
その言葉が聞こえた瞬間、雫の背筋がひやりとする。
ルカはすぐには答えなかった。
一度だけ、ほんの一瞬だけ視線が雫の方へ向く。
金網の向こう。
泣き崩れそうな顔で、それでも必死に自分を見ている雫。
その姿を見て――ルカは、わずかに目を伏せた。
そして、何かを決めるように息を吐く。
「……知らねぇ」
短く、乾いた声だった。
その一言。
雫の世界が、音を失った。
「……え」
喉から、かすれた声が漏れる。
何を言われたのか、理解はできているのに、脳が拒否する。
(知らない?)
金網を握る手が震える。
「……嘘」
小さく、呟く。
「何……言ってんの……」
ルカはもう一度だけ、雫を見た。
今度は、ほんの少しだけ目が揺れていた。



