乾いた声だった。
喧騒の中に溶けて、すぐに消えるはずの小さな呼びかけ。
それでも、雫の目はそこから離れなかった。
高い金網のフェンス。
その内側にある、冷たい首切り台。
その前で――
ルカは、膝をついたまま俯いていた。
動かない。
呼吸しているのかさえ分からないほど静かに、ただそこにいる。
「……っ」
雫の呼吸が、途端に浅くなる。
肺に空気が入らない。
吸おうとしても、喉の途中で止まる。
視界が揺れる。
(やだ。)
(やだやだやだやだやだ)
頭の中を、それだけが埋め尽くしていく。
考えることができない。
理解することもできない。
ただ、目の前の光景だけが現実として突き刺さってくる。
「……ルカ……っ!!」
気づけば、雫は走っていた。



