足が勝手に動く。
洞窟の入口へ。
外の光は、やけに眩しい。
(違う)
(いないのは分かってる)
それでも、身体は止まらなかった。
森の道へ一歩踏み出す。
あの時と同じ道。
ルカと逃げてきた、街に続く道。
葉の揺れる音が、やけに耳に刺さる。
「……確かめるだけ」
雫は小さく呟いた。
いるわけがない。
そんなこと、頭では分かっている。
でも――
確かめないと、終われない。
森を抜けると、遠くに町の輪郭が見えた。
石畳。
人の声。
前と変わらない日常。
その光景が、かえって現実味をなくしていた。
雫は息を呑む。
(……いないよね)
それでも足は止めない。
広場へ向かう。
雑踏の中を歩きながら、視線だけを必死に巡らせる。
銀髪。
赤い瞳。
あの、少し不器用な笑顔。
それは、どこにもない。
「……やっぱり」
胸の奥で、安堵と失望が複雑に絡み合う。



