外に出る。
冷たい朝の空気。
目の前いっぱいに広がる、いつもの森。
そして――
そのどこにも、ルカはいない。
「……うそ」
小さくこぼれた声は、風にさらわれて消えた。
雫はその場に立ち尽くす。
(まだ………散歩してるんだよね。)
そう思おうとしても、心臓がどんどん嫌なリズムを刻む。
「ルカ!!」
叫ぶ。
返事はない。
もう一度、今度は森の奥へ向かって叫ぶ。
「ルカ!!!」
静寂。
鳥の声すら、やけに遠い。
雫の手が震え始める。
昨日の夜、最後に見た顔が脳裏に浮かぶ。
あの、優しいのに、どこか決意していた目。
(……やだ)
呼吸が浅くなる。
「……やだよ、ルカ……」
声が小さく崩れる。
雫は森の入口に膝をついた。
指先が地面の土を掴む。
まだ朝なのに、世界が急に冷たくなったみたいだった。



