(もし、俺が人間として生まれていたら)
そんな、ありえない仮定が浮かぶ。
普通に出会って。
普通に笑って。
普通に隣にいて。
くだらないことで喧嘩して。
どうでもいいことで笑って。
そんな、どこにでもあるはずの時間を、過ごせていたのだろうか。
(……ずっと隣にいたかった)
喉の奥に、言葉にならないものが詰まる。
同時に、もう一つの願いが浮かぶ。
(でも、雫には……)
ルカはわずかに目を伏せる。
(幸せになってほしい)
自分がいない場所でも。
自分のいない世界でも、
この少女はきっと、ちゃんと笑って生きていける。
そう思うのに。
それを想像するだけで、どうしようもなく苦しかった。
ルカはそっと手を伸ばす。
雫の髪に触れる寸前で止める。
触れたら、もう戻れなくなる気がした。
代わりに、小さく息を吐いた。



