でも、この人は………
少なくとも、雫が知っている世界の“恐ろしさ”とは、違う。
そう、思ってしまった。
しばらく、沈黙が流れた。
火の落ちた暖炉のそばで、夜風が木の壁を撫でている。
小屋の中は、森の音だけが満ちていた。
雫は、そっと息を整える。
――逃げない。
そう、心の中で決めた。
ルカは、雫から少し距離を取った場所に立っている。
こちらを見ているのか、見ていないのか分からない表情。
それでも。
この人は、雫を追い詰める気がない。
それだけは、分かった。
「……あの」
雫が声を出す。
思ったより、ちゃんと声になった。



