拳が、ゆっくりと握られる。
「さっきの連中……」
低い声。
「多分、“確信”があった」
雫の背中に、冷たいものが落ちる。
「俺たちがここにいるっていう確信だ。」
ルカはそこで言葉を切った。
洞窟の空気が、さっきまでと同じはずなのに、急に重くなる。
雫はゆっくりと立ち上がった。
「じゃ、じゃあ……また逃げれば……」
言いかけて、止まる。
ルカの目が、変わらないままだったから。
そこにあったのは“逃げ続ける選択肢”をもう見ていない目だった。
ルカは静かに言う。
「次は……もうないかもしれねぇ」
その一言で、雫の中の何かが凍る。
ルカは視線を逸らし、暗闇の奥を見た。
「……俺がいる限り、終わらねぇんだ」
その言葉は、独り言みたいだった。
けれど雫には、はっきり聞こえた。
雫は一歩、近づく。
「ルカ」
声が少し震えている。
「何考えてるの」
ルカはすぐに答えない。
ほんの少しだけ沈黙があって——
ようやく、言葉が落ちた。



