ルカが動かない。
雫は気づくのに一拍遅れた。
(……ルカ?)
隣を見上げる。
そこにいたルカは、さっきまでとはまるで違っていた。
安堵も、緊張の解けた気配もない。
ただ——
暗い。
静かで、深く沈んだ目。
まるで、さっきの出来事を“終わったこと”として
処理していない目だった。
雫の笑顔が、途中で固まる。
「ル…カ……?」
呼びかけても、すぐには返事がない。
ルカは洞窟の入口の方を見たまま、ほんの少しだけ息を吐いた。
「……思ったより、早いな」
ぽつりと落ちる声。
雫は首をかしげる。
「え?」
ルカはようやく雫の方を見る。
けれど、その目はどこか遠くを見ていた。
「……もう、ここも長くは持たねぇ」
その言葉に、雫の呼吸が止まる。
「どういう……こと?」
ルカは少しだけ間を置いたあと、視線を落とした。



