* * *
洞窟での暮らしが始まってから、数週間。
ただの仮住まいだった場所は、
いつの間にか、二人にとっての新たな「帰る場所」になっていた。
朝起きて、湖へ水を汲みに行って。
木の実を採って。
夜は火の代わりに、静かな声だけを頼りに眠る。
それだけの生活が、あまりにも穏やかで。
だからこそ、それが壊れる予感に鈍くなっていたのかもしれない。
その日。
いつもより早く、空気が違った。
雫が水場から戻ってきたとき、
ルカはすでに洞窟の入口の方を見ていた。
「……誰か来た」
短い声。
その一言で、すべてが伝わった。
次の瞬間だった。
遠くから、複数の足音。
一人ではない。



