二人の間に流れる時間は、静かで穏やかだった。
以前みたいに、無理に笑ったり、気を遣ったりしなくていい。
ただそこにいるだけで成立する関係。
それが心地いいのか、それとも怖いのか。
自分でも分からないまま、雫は隣に腰を下ろした。
「ここ、意外と住みやすい場所だね」
「……住めば都、ってやつだな。」
ルカが笑うと、雫もつられてフッと笑う。
——本当に、こんな時間がずっと続けばいいのに。
そんな、現実逃避みたいな願いが、自然に浮かんでしまうくらいに
この場所は静かで。
そして、あまりにも壊れやすく見えた。
風が洞窟の入口を抜けていく。
その先の世界では、まだ何も知らないまま時間が進んでいる。
ただ、この小さな世界だけが、少しだけ止まっているようだった。
幸せだった。
この幸せがいつまでも続けばいいと――そう思っていた。
けれど、この世界に、永遠と続くものなんてない。
頭では分かっているはずなのに、
雫は何度も、その“続いてほしい日常”に縋ってしまうのだ。



