終わりから始まる恋を、君と

洞窟での暮らしは、気づけば妙に“日常”になっていた。

朝は冷えた空気で目が覚めて、昼は外に出て水を汲んだり、

木の実を探したりする。

夜は焚き火の小さな灯りを囲んで他愛もない話をする。

不思議だった。

逃げてきたはずなのに、そこには確かに「暮らし」があった。

雫は湖畔で水を汲みながら、ふと手を止める。

水面に映る自分の顔の隣には、

少し離れた場所で木陰に寄りかかるルカの姿がある。

距離は近いのに、どこか警戒が抜けきらないその立ち方。

(……まだ、少しだけ痛そう)

完全に回復したわけじゃない。

それでもルカは何も言わず、普通に振る舞おうとしている。

雫は水を入れた容器を持ち上げて戻る。

「ルカ」

呼ぶと、ルカはすぐに顔を上げた。

「……なんだ?」

「水。」

そう言って差し出すと、ルカは少しだけ間を置いてから受け取った。

「……ん」

短い返事。

それだけなのに、雫はなぜか満足してしまう。