* * *
洞窟の入口を、朝の光が照らした。
雫はゆっくり瞬きをする。
一度、二度。
そこでようやく、
自分がルカの腕の中で眠っていたことに気づいた。
「……え」
小さく声が漏れる。
動こうとして、すぐに止まった。
すぐ目の前に、ルカの顔がある。
近い、なんてものじゃない距離だった。
長い睫毛が影を落としていて、
整った輪郭が静かに呼吸とともに微かに上下している。
白い肌は光を反射しないのに、なぜか淡く発光しているように見えた。
雫の心臓が、ひとつ強く跳ねる。
(……近い……)
当たり前のことなのに、頭が追いつかない。
ルカはまだ眠っている。
昨日の傷の名残はほとんど消えているけれど、
疲労だけは残っているのか、起きる気配はない。
その無防備さが、余計に距離を壊していた。



