雫は離れない。
「やめない」
また、即答だ。
ルカの肩に顔を少しだけ寄せる。
「ルカが生きてるほうがいい」
それだけが、理由だった。
ルカの手が、空中で一瞬だけ迷う。
触れていいのか分からないまま、宙に浮いた指先。
やがて――
そっと、雫の背に触れる。
ほんの少しだけ。
壊れ物に触れるみたいな、弱い力だった。
「……お前、ほんとに」
言葉が続かない。
雫はそのまま、少しだけ笑う。
「うん?」
ルカは目を閉じる。
それから、かすかに吐き出すように言った。
「……ずるいな」
その声は、もう責めではなかった。
ただ、どうしようもなく揺れているだけだった。
雫は、ルカの背中に腕を回したまま、ゆっくりと息を吐いた。



