「……悪かった」
掠れた声。
それが、ようやく絞り出した最初の言葉だった。
雫は一瞬、きょとんとする。
「……なにが?」
ルカは顔を伏せる。
雫の腕に残る痕を見るのが耐えられないみたいに。
「……お前を、傷つけた」
言葉を吐くたびに、自分の中の何かが削れていくようだった。
「俺は……こういう存在だ」
声が震える。
「人の血を取って、その犠牲の上でやっと成り立つ存在。」
そこで一度、息が途切れる。
歯を食いしばる音が、静かな洞窟に小さく響いた。
「……最低だな」
その言葉は、誰に向けたものでもなかった。
自分自身に向けた、断罪だった。
雫は、その言葉を聞いたまましばらく黙っていた。
そして――
ゆっくりと立ち上がり、ルカの前にしゃがみ込んだ。
「ルカ」
呼ぶ声は、いつもと変わらない。



