「……ダメに決まってんだろ」
雫は首を傾げる。
「なんで?」
本気で分かっていない声だった。
「ルカは血を飲んでないからこうなってるんでしょ」
腕を少しだけ近づける。
「じゃあ、必要じゃん」
その言葉に、ルカの表情がわずかに歪む。
痛みとは別の種類のものだった。
「……必要とかじゃねぇ」
「じゃあなに」
即座に返す雫。
ルカは答えない。
答えられない。
喉の奥で言葉が詰まる。
その間にも、雫の腕はそこにある。
“助けるための手段”として、まっすぐに差し出されたまま。
ルカは、かすかに笑いそうになって――やめた。
「……お前、自分が何してるか分かってねぇだろ」
「分かってるよ」
即答。
「少なくとも、ルカが苦しいのは分かる」
一拍置いて、雫は続ける。
「それを止める方法があるなら、できる限りしてあげたい」
あまりにも単純で。
あまりにも迷いがない。
ルカの指が、微かに震えた。
それは拒絶でも、同意でもない。
ただ、どうしていいか分からない動きだった。



