「……飲んだら、治るんでしょ」
静かな声だった。
感情を押し殺しているわけでもない。
ただ、“当然のこと”として言っている。
「だったら、飲んで」
洞窟の空気が、少しだけ変わる。
ルカの呼吸が一瞬止まった。
薄く開いた赤い瞳が、雫の腕を見たまま動かない。
理解が追いついていないというより――
理解したくない、という沈黙だった。
「……お前」
掠れた声。
それ以上、続かない。
雫は一歩も引かない。
その目は真っ直ぐで、揺れていない。
怖さも、痛みの想像も、そこにはほとんどなかった。
ただ“ルカを助けるための選択”だけが、そこにある。
ルカはゆっくりと顔を背けた。
「……何いってんだ」
吐き捨てるような言葉なのに、力がない。



