――吸血鬼は、人の血肉を取り込まないまま人間の側にいると衰弱する。
森での生活の中で、ルカが言っていたことだ。
その意味を、今になってようやく理解する。
「……ルカ」
雫はそっと近づき、膝をつく。
指先で手を握ると、そこにあったのは“体温”というより、
ただの熱の残り火みたいなものだった。
さっきまで確かにあったはずの、安定した温度がない。
人に触れていれば衰弱は緩和されるはずだが、
離れている時間が多かったのもあるのか、 どんなに強く手を握っても、
回復する様子はなかった。
「……ねぇ、これ……」
言いかけて、雫は言葉を飲み込む。
ルカは薄く目を開ける。
焦点は合っていない。
それでも、雫の声には反応している。
「……離れろ」
掠れた声だった。
命令というより、押し殺した本音みたいな響き。
雫は一瞬、意味が分からなかった。



