「なんで、来たんだ?」
雫は即答しなかった。
ほんの少しだけ考えて、それから静かに言う。
「ルカと一緒にいたかったから。」
「……それだけか?」
「それだけだよ」
迷いのない声だった。
ルカはそれを聞いて、目を閉じる。
「……すげぇな。」
「そうかな」
少しだけ間があって――
ルカは、ほんの小さく息を吐いた。
「……ありがとな。」
その一言は、ほとんど聞き取れないくらい小さかった。
けれど雫には、ちゃんと届いた。
雫は何も言わずに、そっとルカの手に触れる。
今はまだ、外の世界は遠い。
追われている現実も、危険も、消えたわけじゃない。
それでもこの洞窟の中だけは、ほんの一瞬だけ――
二人の呼吸だけが、静かに重なっていた。



