雫はゆっくりと息を吸って、ルカの腕にそっと触れる。
まだ傷は完治していない。
聖水の焼け跡も、動くたびに痛みを呼び起こしているのが分かる。
「……もう少し、治すね」
そう言って手を伸ばそうとした瞬間、
ルカの指が雫の手首を軽く掴んだ。
「……いい」
低い声だったけれど、もう命令みたいな強さはない。
ただ、少しだけ弱い。
「言っただろ。
それを使うのは……もうやめろ」
雫は一瞬だけ固まって、それから静かに首を振る。
「やめない」
「雫」
「ルカが動けない方が危ない」
言い切ると、ルカは何か言い返そうとして――やめた。
代わりに、困ったように眉を寄せる。
「……ほんと、勝手だな」
「お互い様でしょ」
その言葉に、ルカの口元がほんの少しだけ緩む。



