「……大丈夫」 誰に向けるでもなく呟いて、強引に足を動かす。 ルカが横目でそれを見た。 「……雫」 低い声。 雫は答えないまま、前だけを見る。 「雫」 もう一度呼ばれる。 それでも雫は走り出した。 森の方へ。 痛みを振り払うように、ただ足を動かす。 ルカが舌打ちを一つして、その後を追う。 「……無茶すんな」 「無茶じゃない」 即答。 呼吸が荒いまま、それでも雫は走り続けた。 石畳の道を抜けると、空気が変わる。 人の気配が薄れていく。 やがて―― 木々の境界線を越えた。