「知ってます」 即答だった。 迷いのない声。 兵士の眉が、ぴくりと動く。 「それでも」 雫は、はっきりと言い切る。 「この人は、私にとって大切な人です」 一歩、前へ。 「どんな存在でも関係ない」 涙を拭うこともせず、 真っ直ぐに見据える。 「私は、この人を信じてるから」 その言葉が、地下に強く響いた。 兵士は、しばらく雫を見下ろしていた。 長い沈黙。 松明の火が、鉄格子の影を揺らし続ける。 やがて――