床に落ちるほど深く頭を下げたまま、
震える声で、叫ぶように言った。
「ただの……優しい人なんです……!」
沈黙。
松明の火が、ぱちりと小さく弾ける音だけが響く。
やがて――
兵士が、ゆっくりと息を吐いた。
「……顔を上げろ」
低い声。
命令だった。
雫の肩が、びくりと震える。
それでも、ゆっくりと顔を上げる。
涙で濡れた瞳が、まっすぐ兵士を見た。
その視線を受けて、兵士はほんのわずかに目を細める。
そして――
ちらりと、牢の中のルカへ視線を向けた。
ぐったりとしたまま、
それでも必死に雫を見つめる赤い瞳。
守ろうとしている目だ。
兵士は再び、雫へと視線を戻す。



