「怪物じゃ、ない」 一歩、前へ出る。 「その人は――」 息を吸う。 胸の奥から、言葉を引きずり出す。 「私の、大切な人です」 地下の冷たい空気が、 ぴたりと止まったような気がした。 兵士の前に立つ雫の声が、地下に静かに落ちた、 その瞬間―― かすかな物音が、鉄格子の奥から響いた。 「……っ」 ぐったりとしていたはずのルカの指先が、微かに動く。 ゆっくりと。 重たい瞼が、持ち上がった。 焦点の合わない赤い瞳が、彷徨うように揺れ――やがて、 雫の姿を捉えた。