「……こんな場所に、何の用だ」
ゆっくりと一歩、兵士が踏み出す。
靴音が、やけに重く響いた。
雫の喉が、ひくりと震える。
それでも――
視線だけは、逸らさなかった。
その奥にいる、ルカから。
目を、離せなかったから。
「……その人に、用があるの」
震える声。
けれど、その中に確かな意志が混じる。
兵士の眉が、わずかに動いた。
「……この“怪物”にか?」
吐き捨てるような声音。
その言葉に――
雫の中で、何かがはっきりと変わった。
ゆっくりと、顔を上げる。
涙の跡が残る頬のまま、
真っ直ぐに兵士を見据えて――
はっきりと言い切った。



