雫は息を呑み、そのまま階段へと足をかけた。
一段、また一段と降りるごとに、
空気がひやりと冷たくなっていく。
湿った石の匂い。
どこか鉄のような、鼻を刺す匂いが混じる。
胸の奥がざわつく。
けれど、足は止まらない。
――ルカが、いるかもしれない。
その事実だけが、雫を前に進ませていた。
やがて階段を降りきると、細い通路が奥へと伸びていた。
壁に取り付けられた松明が、ゆらゆらと揺れている。
その頼りない光の中で――
人影が、一つ。
通路の奥。
鉄格子の前に、腕を組んで立つ中年の兵士。
無骨な体つき。
日に焼けた肌。
腰には剣。
明らかに、“見張り”だった。



