* * *
教会の扉を押し開けた瞬間、雫は思わず息を止めた。
――静かすぎる。
人の気配が、ない。
長椅子が整然と並び、色の褪せたステンドグラスから差し込む光が、
床に淡く広がっている。
けれどそこには、本来あるはずの祈りの気配も、
生活の温度もなかった。
ただ、冷たい。
張り詰めた空気だけが、そこにあった。
「……」
雫はゆっくりと足を踏み入れる。
石床に靴音が響くたびに、自分の存在が暴かれていくようで、
心臓が嫌に大きく鳴った。
(……地下……だっけ)
言われた言葉を思い出し、視線を巡らせる。
やがて、祭壇の脇に――
地下へと続く、細い石の階段を見つけた。
迷っている時間はない。



