肺が焼けるように痛くても、
足が重くなって感覚が鈍っても、
立ち止まるという選択肢は、最初からなかった。
息を切らしながら、それでも走り続けて――
どれくらいの時間が経ったのか、もう分からない。
来る道中で、何度も転んだ。
躓いて、地面に叩きつけられては、また立ち上がる。
服は泥だらけ。
膝も、手のひらも、擦り傷だらけ。
それでも、痛みを気にする余裕なんてなかった。
やがて――
木々の隙間から、町の輪郭が見えてきた。
「……っ」
かつて、雫が逃げ出してきた場所。
残酷で、冷たくて、思い出すだけで胸が痛くなる場所。
それでも。
雫は一度、大きく息を吸い込んだ。



