「……っ」 再び、吐き気が込み上げる。 喉の奥がきゅっと締まり、視界が歪む。 雫は必死にそれを飲み込み、壁に手をついて立ち上がった。 足がふらつき、何度もよろける。 それでも、止まれなかった。 開けっ放しのドアを、くぐる。 ――外へ。 冷たい朝の空気が、肺に流れ込む。 それが、ひどく現実的で、残酷だった。 家の周囲にも、戦った痕跡は残っている。 折れた枝。 踏み荒らされた土。 けれど―― どこにも、ルカの遺体はなかった。