* * *
気づけば、周囲は木々に囲まれていた。
道らしい道は、いつの間にか消えている。
草は深く、地面は柔らかく、足を取られる。
雫は、もうどれくらい走ったのか分からなかった。
胸が苦しい。
喉がひりつく。
呼吸をするたび、肺が悲鳴を上げる。
「……っ」
足が、もつれた。
前のめりに倒れそうになり、咄嗟に木に手をつく。
掌に走る痛みに、思わず息が詰まる。
そのまま、立ち上がれなかった。
膝が笑っている。
視界がじわじわと暗くなる。
――まだ、だめ。
ここで止まったら、意味がない。
雫はふらつく体を引きずるように歩き出す。



