堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


私がよほど切羽詰まった顔してたんだろうな。


それなりに仲のいい見張りくんは、自分の"見張り"という仕事と、族の姫のどっちを優先するか一瞬迷った。



その一瞬で、私は逃げた。


追いつかれたら、絶対に連れ戻されるから。



族のみんなが嫌いなわけではけっしてないけど、それよりも月のことが大切なんだよ。




「月っ、どこ?」




答えてくれる人がいるわけじゃないけど、口からついて出た言葉。


それを拾ってくれたのが、月だったかよかったのに───




「お前もしかして、月…椎堂の女?」


「……誰」


「否定しないってことは合ってんの?」




私の足を止めたのは、真っ直ぐな瞳をする人だった。


目鼻立ちがしっかりしている、まあ俗に言うイケメン。


その人は、黙りこくった私に再度問う。




「椎堂……ってか【Fleur】のお姫サマ、だよな?」


「…違う」


「じゃあなんで椎堂を探してんだよ。この肌寒いのに、んな薄着で」




飛び出してきた私は、部屋着。5月の初めの夕方に着るには、まだ肌寒い。


真っ直ぐに私を見てきて、嘘は全て見抜かれてしまうような気にすらなる。


私は正直、そういう目をする人が苦手だった。


自分が汚く感じてしまうから。