堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


「月さ、顔だけはいいんだからそこら辺の可愛い子引っかけてくればいいじゃん」


「顔だけはってひどくない?それにさっき彩雫じゃなきゃ意味ないって言ったの聞いてなかった?」


「聞いてたよ。ホストの口説き文句にしか聞こえなかったけど」




こんな可愛げのない言葉ばっかりで、ほんとに彼女なの?って思われるかもね。


その疑問は大正解。


月はきっと、そばにいる私を都合よく使ってるだけだから。


"好きだから"とかじゃない。姫という存在がいる方が"都合がいいから"。




「彩雫、俺もジャム食べたい」


「勝手に食べればいいで───んっ」


「甘いね」




テーブル越しに身を乗り出して、私にキスを落とす。


好かれてる、と錯覚しそうな甘いキスを。


離れたあと、至近距離でにやっと笑うのも忘れない、憎らしいほどに整った顔。




「……急になに」


「キスしたのにそんな無表情されると傷つくんだけど」


「月のキスは感情がこもってない気がするから」


「他の子にはキスなんてしないよ?」




ことあるごとに愛のないキスされてたら、慣れるに決まってるでしょ?


毎回毎回、愛のないキスはしないでよ。


他の子にはしないとか、本当かどうかも怪しい。たまに女物の香水を漂わせて帰ってくるの、知ってるんだから。