堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


「夕星 飛廉……」




黒スーツのひとりが開けた扉の向こうにいたのは、まさかのあいつ。


できれば会いたくなった人。




「なんなんですか、飛輪さん。ていうか、ルナがどうしてここに……」


「飛廉。お前のとこにルナをやろう。姫はいなかっただろう?」


「は?ルナは椎堂の──【Fluel】のですよね?」


「いるのか、いらないのか?欲しいのはその答えだけだ」




何か言っても私の言葉なんて、たぶん今は届かない。


私は間違えた、明らかに。言ってはいけないことを言った。飛輪さんの残酷さを舐めてた。


月と幸せになるのは、私がいいのに……。




「断ったら、ル───そいつはどうなるんですか」


「テキトウに決めるが?」


「……もらいます、俺が」


「そうか。じゃあ話はもう終わりだ、私は帰る」




飛輪さんの顔なんて見れなかった。


目が合えば最後、私は何をするかわからないから。


歪む視界で、ずっと自分の足元を眺めたまんま。




「何やってんだよ」


「そんなの、私が聞きたい」


「……ばかだろ」




ため息を吐いて、頭をくしゃくしゃと混ぜる癖、月に似てる。


月の余裕そうに笑う顔が見たい。