そんなわけない。
子どもが親の言うとおりに生きなきゃいけないわけない。
親は、子どもに命令するんじゃなく、道標になるべきだ。
「月は、あなたのモノじゃない」
「……何が言いたい」
「親だからってなんでもしていいわけじゃない。子どもを縛っていいわけない」
「お前に何が───」
「あなたは最低だ。本当に月を大切に思っているなら、そんな扱いできるわけない」
飛輪さんのこめかみに青い筋が浮かぶ。
正直、怖い。大人の男の人に逆らって、真正面からものを言うのは。
ただ、それ以上に許せない。この人は自分の言葉でどれだけ月が傷ついているか全くわかっていないから。
「そんなにあいつが大切か?」
「……そうですけど」
「私は、月からお前を遠ざけるなど容易い」
「っ……」
"月のそばにいたければ黙っていろ"
あなたはそう言いたいんだよね?そう言えば私が黙ると思って。
「あなたはなにもわかってない。……たとえ私がそばにいなくても、月が幸せならいいんです」
「……そうか。じゃあお望み通り離してやろう」
「……は」
言うや否や、飛輪さんは残忍に笑って扉の方に顎をしゃくった。



