堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


「月……、もう寝ちゃった?」


「……起きてる」


「…レオくんと何話してたの」




少し開いたドアの先、月が微かに身じろぎする。


そんな反応だけじゃ、月の心の中は見えない。




「…気にしなくていーよ」


「なんで」


「彩雫は知らなくていいことだから」




これ以上踏み入ってくるなって聞こえたよ、私には。


危ないことだから教えてくれないのかもしれない、秘密のことなのかもしれない。


でも、でもさ──




「月、言ったじゃん。覚悟しといてねって」


「…それがどーしたの」


「私はあの日、月について行ったこと、後悔してない」


「……」


「だから教えて?私は───月の力になりたいの」




漆黒の瞳が、驚いたように大きく見開かれた。


光を取り込んだ目の中で、星が瞬く。


私が月にこんなこと言ったのは初めてだから。


でもね、月。私はずっと前からそう思ってたよ。




「…彩雫」


「なに?」


「彩雫は、俺らの世界がどんなに汚れた場所か知らずに巻き込まれただけ。…逃げても、いいんだよ」


「っ、なんでっ、そんなこと言うの」