浴室に向かう途中。
月の部屋から聞こえてきた会話は、少し怒っているのかもしれないレオくんと、感情が読み取れない月のものだった。
なんて言っているのかは聞こえないけど……。
少しだけ聞こえたレオくんのタメ口は、私的にはすごく珍しかった。
「あっ、ルナさん」
「…どうしたの?」
「……聞こえてました?」
「少しだけ」
少し大きめな音を立てて開いたドア。
少し気まずそうな顔をしたレオくんと目が合った。
「いろいろあって……、まあ気にしないでください。こっちで片付けるので」
「……教えては、くれない?」
「教えません。月に───」
「…月に?」
しまった、という顔をしても遅いよ。
この会話はきっと、月に聞こえてるんだよ?月は耳がいいの、レオくんも知ってるはずでしょ。
「俺、帰ります」
「ちょっと待っ───」
「お邪魔しました。ルナさん、おやすみなさい」
逃げるように、私の元から去っていく後ろ姿。
でもね、レオくん。私は知ってるよ?
あなたはうっかりで大事なことを言っちゃうような人じゃないってこと。
誰かに───いや、私にその話を教えたかったからこそ、レオくんは口に出したんでしょ?
レオくん、あなたは何を教えたかったの───?



