堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


立ち尽くす私のことなんて気にせず、リリリリリ、と来客を知らせるベルが鳴る。


時刻は19時近く。


この時間に、誰?このマンションには、族の人間しか入ってこられないけど……。




「はい」


「ルナさん?レオです」




インターホン越しに声をかけると、涼やかな声が返事をした。


それは、【Fleur】の一員で月の右腕、レオくんのもの。本名かはわからないけど。


とりあえずレオくんをリビングに通して、私はその向かいに座った。




「どうしたの?レオくんが急に来るなんて珍しいね」


「月に用事があって。まだ起きてますよね?」


「たぶんシャワー。……でもそっとしておいたほうがいいかも」


「…何かありました?」




右腕を自分の左手でぎゅっと掴んで下を向く。


有能なレオくんは、それだけで何かを察したらしい。


センターでふわっとアップセットされた髪をくしゃっとかき混ぜて、ため息をはく。


そして、浴室のほうに目を向けたレオくん。




飛輪(ひりん)さんのことですよね。今日、パーティーでしょう」


「……そうだよ」


「ったく、毎回ひとりで抱え込んでるからそうなるってわかってるでしょう…!」




自分に言われた言葉じゃないのに、その言葉は私の心にも刺さった。


いちばん近くで支えなきゃいけない、"彼女"という立場にいるのに、月に抱え込ませてるって言われてるみたいで。


もちろん、レオくんは悪くないけど。