堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


「てかさ、パーティーどうしよっか」


「サボるの?」


「まあ行かなくても父親に怒られるだけだしいいよ」




マンションに戻ってから、月は無理したような明るい声で言う。


お父さんの話を出すとき、月はいつもそういう顔をする。


それは、たぶん───




「いいの?お父さんと話したいことがあるって───」


「いいよ。───会いたくない、あいつとは」




即答。お父さんのことを"あいつ"と呼ぶ月の目は、仄暗い光を放っている。


こういうときの月は、人を寄せつけないオーラがある。


ひとりぼっちで、いようとする。




「月……無理してない?」


「してない、だいじょーぶ」


「でも───」


「ごめん、シャワー浴びてもう寝るわ。おやすみ」




すれ違いざま、頭にぽん、と手を置いて浴室へ向かっていく月。


心なしか寂しげに見えるその背中に、何か声をかけようと口を開く。


でも、何も言葉を紡がずに閉じた。


なんて声をかければいいかわからなかったから。


無力な自分が嫌になる。


私じゃ、月の力になれない───