堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


「いや?素直じゃないな〜と思っただけ」


「…ほんとばか」


「褒めてる?」


「褒めてるわけないでしょ!」




この会話が私を安心させるためだっていうのは分かってた。


わざととぼけて、リラックスさせようとしてくれてる。




「俺さ、ここには来ないでって言わなかったっけ?」


「……知らない」


「はい、嘘。彩雫は記憶力いいんだから忘れないでしょ」




私の成績を知ってるからこそ言える言葉。


中学までは普通に通って、今は専属の先生に高校の勉強を教えてもらってる。


たまにやるテストの結果は、月に見せたり見せなかったり。


ちなみに私の得意教科は理科。完全に理系。




「こういうとこだって知ってたから、俺は来ないでって言った。……危ないから」


「…自分は危ないことばっかしてるくせに、勝手だよ」


「俺は強いよ。自分で言えるくらいには。でも、彩雫は女の子でしょ」




確かにそうだ。男子の力と比べれば、女子である私の力なんてたかが知れてる。


でも、私はただ守られているだけのお姫さまにはなりたくない。




「わかった。ここには来ないようにする。でも、私が月のこと心配してることだけは忘れないでよ」


「……覚えとく」




暗い声色で返事をした月の表情は、(つき)の逆光で見えなかった。