堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


あと10数メートルでホテルの入り口。


あそこに連れ込まれたら、本当に終わりだ。


嫌だ、嫌だ嫌だ。




「助けて─────月」




口からこぼれ落ちのは、ここにはいないであろう人。


少なくとも、今の私の声の聞き取れる範囲には。




「ウチのお姫サマに汚い手で触ってんじゃねーよ」


「ぐぁっ」




酔っ払いのみぞおちに、強烈な蹴りが入れられて、酔っ払いは倒れた。


そして私はその手から解放される。




「ゆ、え……。なんで」


「助けてって聞こえたから?」


「…聞こえるわけない」


「ははっ、バレた?見つけたとき、なんとなくそんな顔してたから言ってみただけ」




いつも通りの軽い笑み。


それに、どうしようもなく安心している自分がいる。




「あっ!怪我とかしてないの?」


「してないよ?あんな奴らよゆー」


「でも、すごい音してたじゃん」


「あれは……バットを振り下ろされた音だね。避けたけど」




避けたなら通話切らなくてもよくない?どんだけ心配したと思ってんの……


わざわざこんなところまで探しに来たんだから。




「俺のこと心配してくれたんだ?」


「っ悪い?」