堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる


私が捕まったら、確実に月やみんなに迷惑がかかる。


……逃げなきゃ


でも、走って逃げられるわけない。




「私を拐っても、なんの意味もないよ?」




冷たい笑みを浮かべて言い放つ。


走って逃げるのは不可能。なら、言葉で切り抜けるしかない。




「強いな。芯が強い人って、男女問わず魅力的に映る……」


「何が言いたいの?」


「別に?まあ……拐わねぇよ。でも、名前は聞いとく」




それは、偽名のこと?それとも───本名?


私の本名を知るのは、私を除いてこの世にたった2人だけ。


父親と、月だ。




「俺は夕星 飛廉(ゆうつづ ひれん)。ちなみに本名」


「夕星……」


「夕方の"夕"に星。夕方の西の空に輝く金星って意味があんだよ。…苗字っぽくないよな」




なんで、私に本名を教えたの。【Anemone】のNo.1で有名だから?


"この街では、本当の名前を教えることが大きな意味を持つんだよ"そう言った月は、今いない。




「俺は教えた。……お前の、本当の名前は?」


「……ルナ」


「…ルナか」




ルナは偽名だ。


族のみんなにも使ってる偽名。