…秋葉。
忘れもしない、彼女の存在…。
私の、永遠の親友。
ゆっくりと目を閉じて、心から祈った。
…どうか、天使の夢を見させて。
** **
「おはようー」
「おはよー」
昨日は、結局天使の夢を見ることができなかった。
ただ…昨日の夢は、離れたところから誰かが私を見ている夢だった。
昨日倒れた時に視界に映った靴のように、異様に光を発している女の子。
中学校の制服を着て、ショートカットだった。
きっと…秋葉だ。そして、中学校にいるという幽霊の…。
そこで、ふと疑問が生じた。
どうして秋葉は、私がいるこの高校に現れずに、中学校にわざわざ現れたのかな?私に会いたいのだとしたら、高校に来ればいいのに…。
…いや、秋葉は私がどこの高校に行ったかどうかは知らないんだった。高校に入学したときは勿論制服姿のまま報告したけれど、実際に見たことはない。それに、秋葉とずっと一緒にいたのは中学校。中学校にいたのも頷ける。
まだHRも始まっていないのに、もうそわそわして時計を何度も確認してしまう。
昨日は何故か気絶してしまったから、今日こそは秋葉の顔を見たい。それでも無理だったのなら、天使に言ってみることにしようかな。
「…実紀」
「あ、倉くん?おはよう」
いつの間にいたのか、隣に倉くんがいた。
「昨日、先帰ってたのか?」
「あっ…ご、ごめんっ!用事があるって連絡するの、忘れてた…!」
「…別に、いいけど」
それからも、倉くんと話しながらもずっと時計を見ながら上の空の私を、倉くんはずっと眺めていた。
「実紀、帰ろ」
「あっ…ご、ごめんっ!私、今日も用事があるから、先帰るね…‼︎ほんとごめん‼︎じゃあね!」
倉くんの返事も聞かずに学校を飛び出そうとした私を、倉くんが引き留めた。
「え、な、何?」
驚きつつも、頭の中はずっとぐるぐる、秋葉のことばかり考えてしまう。
こうしてる間にも、秋葉はずっと私を待ってるはず。
倉くんには申し訳ないけど、早く帰りたい…。
そう考えた途端、私の腕を握る手にぐっと力が入った。
「…俺は、実紀が朱羽のことを忘れられないのは、わかってる」
「…」
「朱羽を忘れられない実紀ごと、好きになったから」
倉くん…。
「でも、朱羽のことをいつまでも考えていたら、何も変わらない。朱羽だって、いつまでも自分に囚われずに、前を向いて欲しいって思うはずだ。だから…」
すうっと大きく息を吸った倉くんが、一息で言った。
「俺は、今の実紀を好きになった訳じゃない」
倉くんはするりと手を離して、呆然としている私の横をすり抜けて帰って行った。
倉くんが行った後も、私は暫くそこから動けなかった。



