どんな君でも、忘れない。


「ねえ、実紀、聞いた?」
「え?」

放課後、荷物を纏めている私に同じクラスの友達が不意に声をかけてきた。
その子は周りを少し見渡した後、私の耳元に口を寄せてきた。
内緒話ってことかな。

「実は…、実紀が卒業した中学校に、幽霊が出たらしいよ」
「……え?」

魂が抜けたような声が漏れて、口元を押さえる。
倉くんを迎えに行かなきゃと言う考えも、一気に頭から飛んでいった。

「幽霊?幽霊って…いるとも思えないんだけど…?それは本当なの?」
「本当だと思うよ。私の妹がそこの中学校に通っているんだけど、裏庭に行った人は全員見たらしい」

裏、庭…。

『好きっ…』

壊れそうなほど波打つ心臓を抑えながら告白したあの日。
急激に襲ってくる眠気に抗えず、芝生に倒れ込んだ感触。
はっきりと覚えている。

もしかして。

頭の片隅に浮かんでいた予想が一気に現実味を増してきて、突っ走りそうな感情を押さえながら尋ねる。

「ど、どんな幽霊だって?」
「うん?えーっとね、中学生の女の子だって。同じ制服を着てたから間違いないみたい。ショートカットの可愛い女の子だったけど、ちょっと顔色が悪くて、生きてる人間ではないってすぐにわかるくらい」

ショートカットの、同じ学校の女の子…。

まさに、な感じがして、一瞬めまいがした。

まさか…まさか、本当に…そんなことが、あるの…?

でも、今まで散々、非現実的なことにあってきたんだ。有り得なくは、ない。

「裏庭に行った人は、今まで全員見てたんだよね?」
「う、うん。妹が言うには、そう言っていたよ」
「ありがとうっ」

釘をさすような質問にもはっきりと頷いてくれて、ホッとした。
その答えを聞いた瞬間に、私は教室を飛び出して中学校への道を走った。


** **

「な、懐かしい…っ」

来ていないのはほんの半年ほどなはずなのに、こんなに懐かしさを覚えるものか。
鞄を床に置いて、長い草掻き分けてフェンスに開いた穴から学校の中へと入った。そしてその後、鞄を回収する。

侵入者というのは、こんなにドキドキするものなんだ…。
人が通るたびに、心臓が跳ね上がる。死角になる位置に体を隠して、息を潜める。
狭い校庭が、なんだか途方に暮れるほど広く感じた。

校庭をなんとか渡りきり、幽霊の目撃情報があったという裏庭へ。
裏庭は、あの頃から何も変わっていなかった。

「懐かしい…」

ぽろりと言葉が溢れた瞬間、心臓が大きく波打った。思わず胸元のシャツを握りしめる。