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今日は倉くんと夜の水族館デートに電車に乗っていくのだ。
夜にデートをするという発想がなくて、倉くんに提案された時はびっくりしすぎて叫んでしまったほどだ。
でも倉くんが親に話をしてくれたお陰で、こうやって行くことができて本当によかった。
電車で揺られていた時、不意に肩に重みを感じて横を見ると、倉くんが目を閉じて私の肩に寄りかかっていた。
……高校生だし、勉強とかで忙しいよね。
彼は授業をサボったりするサボり癖はなおったようで、なんなら「医者になりたい」といって今は必死に勉強をしているみたいだ。
高校はどうでもいいと言って私と同じところに入っていたのに、将来の夢を持てるようになったとは。自分ごとのようにすごく嬉しかった。
私はどうだろうか。夢なんて持っているだろうか?
自問自答しても、答えなんて決まってる。
夢なんて持てない。将来のことなんて考えれない。
だって……。
『まもなく、〇〇駅ー、〇〇駅ー。お出口は、左側です』
そんな機械的なアナウンスに、はっとした。
「そ、倉くん、起きて…っ」
何度もおこそうと試みると、ようやく倉くんがゆっくりと目を覚ました。
「着いたよ」
「…んー…」
何度も眠たそうに目を擦っている。
リュックを背負い直している間に、プシューッと言いながら扉が開く。
2人で電車から降りると、嫌でも倉くんに視線が集まる。
「え、待って超イケメン…っ」
「モデル…っ⁉︎有名人…⁉︎」
「あの人の隣にいる彼奴誰?」
そりゃそうだと思う。隣にいる倉くんは、昔も高かった身長がもっと伸びて、すらりとしていて長身。二度見したくなるほどスタイルが良くモデルのようだ。
綺麗な美しい黒い瞳はどこか遠くを見つめている。
鼻は当たり前のように高く、唇は薄い。
たまにあの頃のちゃらちゃらした不真面目さは出るけれど、大人っぽくなった彼はもう完璧だ。
そんな人が私の彼氏だなんて、全く信じられない。
「あの人めっちゃかっこいい!」
「話しかけてみる?」
「え、あの女子彼女じゃないの?」
「あんなやつ妹に決まってるじゃん。譲ってくれるっしょ」
つ、強気だ…。
少し薄暗くなってきた今でもわかるほど顔を赤らめた人たちがゆっくりとこっちに歩み寄ってくる。
だんだん私たちに近づいてきた頃、彼女たちがすごく可愛い人だと分かった。
スタイルも抜群で、私が少し恥ずかしくなったりするほど可愛い。
だんだんと自信がなくなってきて、少しずつ顔が俯いていく。
「あ、実紀、そっちじゃない」
「えっ…」
——グイッ
ぼーっとしていて変なところに行ってしまっていたらしく、倉くんが腕を引っ張ってきた。ぐらりと体勢を崩してしまい、引っ張られた勢いで倉くんの方へ身体が傾いた。
…ところを、すんでのところで倉くんが受け止めてくれた。
半分後ろから抱きしめられているような体制に、一瞬ドクンっと心臓が大きく跳ね上がった。
互いの心臓が聞こえてきそうな距離に、涼しい夜なはずなのに顔が火照る。
「大丈夫か?」
「う、うん…!」



