片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。

「離して下さい。こんなことをして何になるというのですか」
「お前が婚約を戻すというまで、離さないぞ」

「何度も言いますが、婚約は家と家とのモノ。私だけではどうにもならないことなど分かっているでしょう」
「それでもだ!」

 どこまでも自分勝手な人。
 本当にムカムカしてくる。

「お前のせいで俺の人生は台無しだ。貴族籍からも外されて、今どれだけ惨めな生活を送っているか」
「自分が蒔いた種でしょう」
「うるさい!」

 コンラッドはそう言いながら、大きく手を振り上げた。
 
 殴られる。
 そう感じた私は、思わず目を瞑る。

 しかしその瞬間は訪れることなく、むしろ何かが倒れ込む大きな音で目を開けた。

 目の前にいたのは、コンラッドではなく、なぜかルドウィックだった。
 
 状況が理解できない私は、音がした方を見る。

 そこには蹴倒されたように倒れ込むコンラッドが、地面に転がっていた。