片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。

「どうして私のためだと?」
「おれと婚約破棄すれば、もう君は貰い手などないだろう」

 自信満々な態度が、その言葉に凝縮されているようだった。

 貰い手がないのだから、自分が貰ってやる?
 まったく、自分は何になったつもりなのかしら。

 いくら貴族の婚姻が義務だとはいえ、あり得ない。

「この国で貰い手がなくとも、他国という手もありますし。あなたは真実の愛に生きるのではないですか?」
「あ、あれは勝手にあいつが言い出しただけだ」

「そうであったとしても、子がいるのですよね」
「そんなのは関係ないだろう」
「どうして関係ないなど言えるのか。私には理解出来ませんね」

 自分の保身のために、彼女もその子も捨てるというのかしら。
 ここまで頭が悪いとは思ってもみなかったわ。

 謝罪ですらない以上、これ以上この人と会話する意味もない。
 もっとも、謝罪すら私には必要はなかったのだけどね。