片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。

「王女殿下の輿入れまでには体調を戻さなくちゃね」

 それまではゆっくりしよう。
 私はおやつでの気分転換を諦め、部屋に戻ろうとした瞬間、中庭を突っ切る人間に気付く。

 よく見た顔だ。
 しかしここにはもう現れないはずの人。

 自分でも分かるほど、自分が嫌な顔をしている自覚はある。

「コンラッド」
「アリスティーネ!」

 手ぶらでいつものように、大股でやってくる彼は、どう見ても謝罪をしに来たという様子ではない。

 むしろ謝罪で済むような状況ではもうないのだ。
 
「何をしにここへ来たのですか?」
「何をって、もう一度婚約を考え直してもらうためだ」

 頭を下げるわけでもなく、この横柄な態度。
 人としてどうなのだろう。

「なぜ?」
「なぜって、その方があなたのためでもあるからだ」