片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。

 遠巻きに騒々しさを聞きつけた侍女などが、視界に入る。
 
 なんてことをしてくれたのだろう。
 私の婚約者を呼び捨てにした挙句、その要求が婚約破棄だなんて。

 何があったのかは知らないが、きっとこの話は明日にでも社交界に一気に広がるだろう。

 先ほどまでの胸の痛みを忘れ去るくらい、頭がズキズキと痛むのを感じていた。 

「なぜ、今会ったばかりのあなたに婚約破棄を迫られなければならないのです?」

 半ば私も、どうにでもなれという感じで彼女に聞き返す。
 もうこうなってしまった以上、噂が広がるのは一瞬だ。

 どうせ隠せないのなら、今聞かずにどうするというの。

 だいたいもう、私のせいでもないのだから。

「わたしのお腹にコンラッドの子がいるのです‼」

 きっぱりと彼女は言い放ち、そして確かにややふくよかになっているお腹を擦って見せた。