片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。

 一度だけ私もお会いしたことがある。

 隣国である砂漠の国の第一皇子様だ。

 黒い髪に赤い瞳。やや褐色の肌。
 ルドウィックとはやや違うものの、引けを取らぬほど強そうな人だった。

 婚約している以上、いつかこの日が来るのは知っていた。
 だけどまだ少し先だと思っていたのに。

「今は春でしょう? 秋にはもう向こうへ行くわ」
「そんなに早くなのですね……。寂しくなります」
「アリスティーネなら、そう言ってくれると思ったわ」

 私の返答がよほど嬉しかったのか、殿下は満面の笑みを返してくれる。
 
 本来ならば「おめでとうございます」と一番に言うべきなのだろう。
 
 だけどルドウィックのいる前で、その言葉は言えなかった。