Lost Song

(手術はしない。歌手として最期まで歌って死ぬ)

そうヤケクソになって思っていた私に寄り添ってくれたのは昴だった。昴だけだった。

「俺はUTAの歌が好きだ。でもそれより好きなのがある。音羽だ。音羽が俺の全てなんだ。俺のために生きてくれないか?俺は音羽と生きていたい」

何度もぶつかった。何度も昴にも八つ当たりした。何度も泣いた。そして、決意した。

『私、UTAは喉の病気のために音楽を引退することにしました。ラストライブを×日に配信します。ぜひ来てください』

SNSに引退を発表した。その日は、手術前日の夜だ。最後に歌って、私は人魚姫みたいに声を失う。

「じゃあ、歌います!」

曲のイントロが流れ出す。私は昴の方を見た。昴は優しく微笑んでいる。そんな彼に、私は唇を動かした。

「覚えていてね。私の声を」

歌が、始まる。