「……おい。いつまでニヤニヤしてんだよ」
雪弥の自室。ドアを閉めた瞬間、彼は逃げるように窓際まで歩いていき、背中を向けた。
リビングで見せていたあの堂々とした「俺の女」宣言はどこへやら、今の彼の耳たぶは、夕焼けよりも真っ赤に染まっている。
「だって、雪弥があんなに自分からお父様やお母様に私のこと自慢してくれるなんて思わなかったから……」
「っ、……自慢じゃねーよ! 事実を述べただけだ。勘違いすんな」
彼は乱暴に髪をかき上げながら振り返ったけれど、私と目が合った瞬間に、またすぐに視線を泳がせた。
さっきまでの「支配者」のようなオーラは消え失せ、そこには年相応の、恋人にデレてしまったことを必死に隠そうとする男の子の姿があった。
「『世界で唯一の女』だなんて、雪弥、本当に私のこと……」
「……あー! うるせー! 喋るな、口を閉じろ!」
雪弥はガシガシと自分の顔を両手で覆い、うめき声を上げた。
「……母さんたちがあんなに食いつくと思ってなかったんだよ。……クソ、俺様としたことが、ペースを乱された……」
私がクスクス笑っていると、雪弥はいきなり大股で歩み寄ってきて、私の肩を掴んでベッドの上に押し倒した。
「ひゃっ、……ゆ、雪弥!?」
覆いかぶさるような体勢。至近距離で見下ろす彼の顔は、まだ真っ赤なままだ。けれど、その瞳にはいつもの独占欲が、少しだけ「甘い熱」を帯びて戻ってきている。
「……笑った罰だ。お前のその口、これ以上余計なこと言えねーように塞いでやろうか?」
そう言って顔を近づけてくるけれど、鼻先が触れそうな距離で、彼はまた「……っ」と息を呑んで止まった。
彼の鼓動が、私の胸にまで響いてくる。トクン、トクンと、早鐘のように打ち鳴らされる心音。
「……空音」
低く、掠れた声。照れを隠すように、彼は私の首筋に顔を埋めた。
「……さっきの、嘘じゃねーから。……俺が記憶を失うのが先か、お前が俺に愛想尽かすのが先か……なんて考えてたけど。……親父たちの前で言って確信
したわ。お前以外の女、俺の人生にはいらねー」
強引な態度の裏で、彼は必死に自分の心を確認していた。
照れて、焦って、でも全力で愛を伝えようとする。
その不器用な溺愛が、私の心に深く、優しく染み込んでいく。
「……雪弥。私も、雪弥以外いらないよ」
「……フン、当然だろ。……お前が浮気なんて考えたら、その場で記憶ごと地獄に連れてってやるからな」
そう言いながら、彼は私の腰を強く引き寄せた。
照れ隠しの毒舌さえも、今の私には甘い囁きにしか聞こえない。
けれど、ふと見上げた彼の本棚の隙間に、ぎっしりと貼られた『付箋』が目に入った。
そこには、今日の夕食で私が「美味しい」と言ったメニューや、私の両親の名前、そして――
『空音は、照れた俺の顔が好き。忘れるな』というメモが。
照れながらも、彼はこの「今」を忘れないために、血を吐くような努力を続けていた。
雪弥の自室。ドアを閉めた瞬間、彼は逃げるように窓際まで歩いていき、背中を向けた。
リビングで見せていたあの堂々とした「俺の女」宣言はどこへやら、今の彼の耳たぶは、夕焼けよりも真っ赤に染まっている。
「だって、雪弥があんなに自分からお父様やお母様に私のこと自慢してくれるなんて思わなかったから……」
「っ、……自慢じゃねーよ! 事実を述べただけだ。勘違いすんな」
彼は乱暴に髪をかき上げながら振り返ったけれど、私と目が合った瞬間に、またすぐに視線を泳がせた。
さっきまでの「支配者」のようなオーラは消え失せ、そこには年相応の、恋人にデレてしまったことを必死に隠そうとする男の子の姿があった。
「『世界で唯一の女』だなんて、雪弥、本当に私のこと……」
「……あー! うるせー! 喋るな、口を閉じろ!」
雪弥はガシガシと自分の顔を両手で覆い、うめき声を上げた。
「……母さんたちがあんなに食いつくと思ってなかったんだよ。……クソ、俺様としたことが、ペースを乱された……」
私がクスクス笑っていると、雪弥はいきなり大股で歩み寄ってきて、私の肩を掴んでベッドの上に押し倒した。
「ひゃっ、……ゆ、雪弥!?」
覆いかぶさるような体勢。至近距離で見下ろす彼の顔は、まだ真っ赤なままだ。けれど、その瞳にはいつもの独占欲が、少しだけ「甘い熱」を帯びて戻ってきている。
「……笑った罰だ。お前のその口、これ以上余計なこと言えねーように塞いでやろうか?」
そう言って顔を近づけてくるけれど、鼻先が触れそうな距離で、彼はまた「……っ」と息を呑んで止まった。
彼の鼓動が、私の胸にまで響いてくる。トクン、トクンと、早鐘のように打ち鳴らされる心音。
「……空音」
低く、掠れた声。照れを隠すように、彼は私の首筋に顔を埋めた。
「……さっきの、嘘じゃねーから。……俺が記憶を失うのが先か、お前が俺に愛想尽かすのが先か……なんて考えてたけど。……親父たちの前で言って確信
したわ。お前以外の女、俺の人生にはいらねー」
強引な態度の裏で、彼は必死に自分の心を確認していた。
照れて、焦って、でも全力で愛を伝えようとする。
その不器用な溺愛が、私の心に深く、優しく染み込んでいく。
「……雪弥。私も、雪弥以外いらないよ」
「……フン、当然だろ。……お前が浮気なんて考えたら、その場で記憶ごと地獄に連れてってやるからな」
そう言いながら、彼は私の腰を強く引き寄せた。
照れ隠しの毒舌さえも、今の私には甘い囁きにしか聞こえない。
けれど、ふと見上げた彼の本棚の隙間に、ぎっしりと貼られた『付箋』が目に入った。
そこには、今日の夕食で私が「美味しい」と言ったメニューや、私の両親の名前、そして――
『空音は、照れた俺の顔が好き。忘れるな』というメモが。
照れながらも、彼はこの「今」を忘れないために、血を吐くような努力を続けていた。


